
こんにちは。香川県高松市で咬み合わせを専門とする「吉本歯科医院」院長の吉本彰夫です。
前歯のセラミックについて、こんなご相談をいただきます。
- 「前歯だけ、これで3回目です」
- 「奥歯のセラミックは何年も問題ないのに、前歯だけ欠けます」
- 「硬いものを噛んだ覚えはないのに、また欠けました」
そのほとんどの方が、「前歯は薄いから仕方がない」とお考えです。しかし同じ場所が繰り返し欠けるとき、原因は前歯そのものではなく、奥歯の側にあることが少なくありません。
今回は、前歯にばかり負担が集まる仕組みと、作り直す前に確かめておきたいことを、順にご説明します。
前歯と奥歯は、役目が違います

前歯は噛み切る歯です
前歯は食べ物を噛み切る歯で、薄く、根も奥歯より細いのが自然な形です。強い力を受け止める役目は負っていません。
強い力を受け止めるのは奥歯です

太い根を持ち、噛む面も広い奥歯が、噛みしめる力を支えています。奥歯がしっかり当たっていると、顎を閉じたときに前歯には強い力がかからない仕組みになっています。
つまり前歯は、奥歯に守られている歯です。
守りが弱くなると、前歯に力が回ります
次のような状態では、奥歯の支えが落ちます。
- 奥歯を失ったまま過ごしている
- 奥歯がすり減って低くなっている
- 奥歯の被せ物の高さが合っていない
- 片側の奥歯が痛くて、そちらで噛まないようにしている
支えを失った分の力は、どこかが受け止めることになります。その行き先が前歯です。
この状態で前歯にセラミックを入れると、材料を何に替えても欠けやすくなります。ジルコニアにしても、同じ場所に同じ力が集まり続ける限り、結果は大きく変わりません。
前歯が欠ける、もう一つの理由
顎を横に動かしたときのすれ違い
食べ物をすりつぶすとき、顎は左右に動きます。このとき前歯や犬歯がすれ違いますが、そのときの当たり方が強すぎると、前歯の先に力が集中します。
就寝中に歯ぎしりをされている方では、この動きが長時間くり返されます。「硬いものを噛んだ覚えがない」のに欠けるのは、この場合が多いのです。
前に出てきている前歯
上の前歯が前に傾いていると、下の前歯が当たる位置が変わります。この状態は年齢とともに進むことがあり、若い頃は問題なかった当たり方が、今は前歯の一点に集まっていることもあります。
作り直す前に確かめること
必要なのは、次に何を入れるかを決めることではなく、力がどこから回ってきているのかを先に明らかにすることです。当院では、次のような検査で確認します。
- 奥歯の高さと当たり方 — 前歯の話であっても、まず奥歯を見ます。ここが出発点です
- どの歯が先に当たっているか — 薄いフィルムを噛んでいただき、当たる順番と強さを調べます
- 顎を横に動かしたときのすれ違い方 — 前歯の先にどれだけ力がかかっているかを見ます
- かかっている力の大きさ — 咬合力を測ります
- 欠けた場所の位置 — 先端か、裏側か、縁か。位置によって力の向きが分かります
- 他の歯の摩耗 — 力の痕跡は、欠けた歯以外にも残っています
欠けた部分は、捨てずにお持ちください。割れ方から力の向きを読み取る手がかりになります。
作り直すときに変えられること
原因が分かると、次にできることが具体的になります。
奥歯の支えが落ちている場合は、奥歯を整えてから前歯に進むほうが、結果として長持ちします。遠回りに見えますが、順番を逆にすると同じことの繰り返しになります。
前歯そのものについては、欠けた位置に合わせて厚みの持たせ方を変えたり、裏側の形を設計し直したりできます。すれ違うときの当たりを調整して、前歯にかかる横方向の力を減らすこともできます。就寝時のマウスピースで、歯ぎしりの力から前歯とセラミックを守ることもできます。
どれが必要かは、検査の結果によって変わります。
費用の目安(自由診療・税込) オールセラミッククラウン 1本 110,000円/ラミネートべニア 1本 110,000円/被せ物に土台(コア)が必要な場合 1本につき 22,000円/就寝時用マウスピース 1個 22,000円
主なリスク・副作用 セラミックは強い力が加わると割れたり欠けたりすることがあります。前歯は薄いため、材料と設計によって適応が分かれます。歯を削る処置を伴うため、神経の処置が必要になる場合があります。奥歯の治療が先に必要な場合は、全体の期間が長くなります。ラミネートべニアは咬み合わせの状態によっては適応になりません。
こんな方は一度ご相談ください
- 前歯のセラミックが2回以上欠けている
- 奥歯は問題ないのに、前歯だけ欠ける
- 硬いものを噛んだ覚えがないのに欠けた
- 奥歯を失ったまま、または低いまま過ごしている
- 片側の奥歯で噛むのを避けている
- 朝起きたときに顎が疲れている、こわばっている
- これから前歯にセラミックを入れようとしている
ひとつでも当てはまる場合、原因は前歯ではない可能性があります。
この記事のまとめ
✅ 前歯は噛み切る歯で、強い力を受け止める役目は奥歯が負っています
✅ 奥歯の支えが落ちると、その分の力が前歯に回ります
✅ この状態では、材料を替えても同じ場所から欠けます
✅ 「硬いものを噛んでいないのに欠ける」場合、顎を横に動かしたときのすれ違いが原因のことがあります
✅ 前歯の相談であっても、まず奥歯の高さと当たり方を確かめます
よくあるご質問
Q. 前歯を丈夫な材料にすれば解決しませんか
材料の強さを上げると、欠けにくくなる場合はあります。ただ、力の行き先が変わらなければ、次は歯の根や周りの骨に負担が移ることがあります。丈夫にするほど、その先で無理が出ることもあるのです。力の量を減らす方向も一緒に考えます。
Q. 奥歯の治療から始めると、前歯はいつきれいになりますか
奥歯の状態によって変わります。調整で済むなら数回で前歯に進めますし、奥歯に治療が必要なら数か月かかることもあります。その間、前歯は仮歯で見た目を整えられますので、見えるところが欠けたままになることはありません。初診の検査のあとに、見通しをお伝えします。
Q. 欠けた部分だけ、詰めて直せませんか
小さな欠けであれば、樹脂で補う方法もあります。ただ、これは応急的な処置で、力のかかり方に対しては何もしていない状態です。繰り返している方の場合、まず原因を確かめることをおすすめします。
Q. 何度も欠けるので、もう抜いたほうがいいのでしょうか
欠けることと、歯を抜くかどうかは別の話です。力の行き先に原因がある場合、歯そのものはまだ十分に使えることが少なくありません。抜くという判断をする前に、なぜ欠け続けているのかを確かめることをおすすめします。
Q. 他院で入れた前歯でも診てもらえますか
はい。前の治療の良し悪しを申し上げるためではなく、今どういう状態にあるかを確かめるところから始めます。お手元に治療の記録や、どこで何を入れたかのメモがあればお持ちください。欠けた部分もお持ちいただけると診断が早くなります。
ご相談ください
「前歯をきれいに直したい」「でも、また欠けるのではないか」
そのどちらのお気持ちも、検査をしてみると整理がつくことが多いのです。当院では、3Dデジタルレントゲン(CT)で歯の内部の状態を確認し、咬み合わせの検査で力の向きと大きさを調べたうえで、今の状態と選べる方法をご説明します。初日に治療を始めることはありません。費用と期間、そして考えられる不利益まで、ご納得いただいてから進めます。
ご予約は、24時間受け付けているネット予約、またはお電話(087-818-1118)からお願いいたします。